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2000.4
著名なアーティストたちの作品が何百万ドルで落札されたというニュースは毎年多くのメディアを賑わかせている。
その舞台となるのは大抵ニューヨークの“サザビー ”や“クリスティーヌ ”などよく耳にするオークション会場のことだ。 そんなオークションが船上でも催され、それは今や人気のプログラムのひとつになろ
うとしている。
船上オークションが本格的に船内に定着し始めたのは90年代初頭とまだそれほど古くない。
しかし現在3社がこのビジネスに参入し、その総売上は30ミリオンダラー(約33億円)と巨額なものへと成長し、毎年確実に売り上げは伸びていると言う。船上オークションは客船業界の中でも今や有望な産業となり始めているのである。
“ファイン・アート・セールス”はその3社の内のひとつ、現在ノルウェージャンクルーズ社、プリンセスクルーズ社をはじめ十数隻の客船上でアート・オークションを展開する代表的オークション会社である。
“ファイン・アート・セールス”の親会社はアメリカ有数の規模を誇る絵画のフレーム製造販売会社“MPF・モールディング&サプライ社”である。
彼ら自身は“ファイン・アート・エディション”“ファイン・アート・ギャラリー”といったアート(美術品)関連の書籍出版やオークション(陸上、海上)と言った2つのアート部門業務を柱に、親会社で培った経験を生かし豊富な品揃えと、良質のアートを持ち味に客船業界にも強い信頼を築き上げてきた。
ファイン・アート社が船内でのアート・オークションをスタートしたのは1993年のこと。ノルウェージャンクルーズ社(以降NCL)からの依頼で始めたのがその最初だという。当時NCLは自社でアート類を専門業者から購入し、オークションナー(アートディレクター)を派遣してくれる会社と契約を結んでいた。その時ちょうど彼らが必要としたアートを揃える業者の中に現“ファイン・アート・セールス”の親会社でもある“MPF・モールディング&サプライ社”も加わっていたのであった。
MPFはその後、他社の客船にもオークションプログラムを提供するためNCLのみとの契約を解消し、そしてこの“アート・セールス社”が設立されたのであった
。実はNCLで最初に「アート・オークション・プログラム」の提案をしたのはなにあろう今回インタビューに答えてくれたスティーブ・サンドゥ氏であった。
彼がクルーズディレクターの職に就いていた頃の提案が、今の会社を生むことになったのであるのだから人生何が起こるかわからない。
その後先見の明を持つスティーブ氏はファイン・アート社にヘッドハンティングされたというわけだ。
実際船上オークションで扱われているアート類を見てみるとそれは海上ならではのものも多く興味深い。ここにその幾つかをあげてみよう。
最近売り出し中のアーティストによる “ウォーターカラー”(水彩画)や、また一部の熱烈なマニアに人気の“アニメーション・アート”と呼ばれる人気アニメ制作過程で実際に使用されたセル画、そして著名なスポーツ選手のサイン入りグローブといった限定ものグッズ、その他には“シルクスクリーン”“リトグラフ”“ジークリー”“セリグラフィ”といった特殊加工が施されオリジナルに近い状態に再生された(例えば版画のように何百枚か作ることで契約された)アート類などなど、特に一般のアメリカ人たちが興味を抱くアート類が中心となり、また比較的手頃な価格のものが多いのもその特徴だ。
具体的に価格の方は10ドル~20ドルからスタートし、60~200ドルぐらいで落ち着くものがそのほとんどであるが、時には千数百ドルからスタートし5千~6千ドルで 落札される高額のものもあるのだそうだ。
ちなみに多くの人達に好まれるのは、絵画を例にすると人間をモチーフとしたもの(特に女性)、また庭や海と言った景色をモチーフとしたものなどにも人気が集まるのだそうだ。
彼ら曰く、静かな部屋に飾られるのに適したようなアートを乗客が選ぶポイントとなるのだそうだ。
さて忘れてはならないのが船上オークションの進行を任せれているアートディレクターの存在である。彼らの腕の良し悪しでその売り上げも大きく左右されているからだ。
「自身が優れたエンターテイナーであること。」いってみれば社交性に富み、駆け引き上手で最終的にいかに多くの利益を得ることができるかといった優秀なセールスマンであることが日頃彼らに求められることなのだそうだ。
現在彼らが契約しているディレクターは下は22歳歳~上は58歳まで。
現在18人のアートディレクターがファイン・アート・セールス社の命運を握っているのである。
一般にオークションに対するイメージと言えば高額な商品が流通するまるで自身とは関係のない別世界のことと思っている方がほとんどであろう。
そんな方々をオークションに招くためファイン・アート・セールス社は和やかな雰囲気作りに注意を払い、客ができるだけリラックスして参加できるよう努めているという。私個人の経験で言うと無料シャンペンが配られる会場に何度か足を運び、人気のアニメセルに心揺さぶられたこともあった。
また、その一方で船上は彼らにとっての最高のビジネスチャンスの場だとも言う。その最大の理由はなんと言ってもクルーズを楽しむ乗客の目的がお金を使いにバカンスにやってきているということだからだ。
そんな中、乗客の何割かがアートを購入なされたとしてもなんら不思議はないという訳だ。
また同時に船内という閉鎖された空間に置かれていることで客が普段接することのないオークションをクルーズを通し知ってもらえる絶好の機会でもあった。
乗客はオークションでアートや憧れのスポーツ選手のグッズ、そして人気キャラクターのセル画が実際に思っていた以上に手頃な価格で購入できることを知るのである。
「たとえその場で購入せずとも今後リピーターとして再び乗船してきた時、彼らは将来の大事な顧客になる可能性を十分持っているのです。」と氏。
さてそれでは今度は角度を変えて、普段耳にすることがない船上に搬入されるまでのアートの流れを見てみることにしよう。
まず彼らはアーティストから権利を買うのであるが、一様にアーティストはビジネスに長けていない者が多いので、そのため彼らはアーティスト達に代わりビジネスを通しマーケットを開拓し、また同時に彼らの育成に尽力をつくしているのだと言う。
通常彼らはアートの単価を低く購入するために彼らからできる限り多くの作品を購入する。その後個々のアートにより以上の芸術性と価格を設けるため、それに適したフレーミング(額)を施し船上へ搬入する。
確かに絵画というのは額次第で見え方が格段と変わるのだから、彼らにとってはお手のものだ。
そしてオークション会社とすればアメリカ人だけで年間7~800万人もの乗客が乗船するクルーズマーケットはまさに今まで眠っていた魅力的なマーケットである。
とは言うものの、ここ数年の需要の変化にともない、他にも同様なオークションビジネスを展開する会社が増えてきているのだそうだ。その一方でクルーズ会社の方も熾烈な価格競争の中にあると言う。そのために今まで以上に客船は航海中より多くの金を落としてもらわなければならない状況にあるのだそうだ。
そんなことからか人気のプログラムのひとつとして定着した船上オークションもその売り上げに貢献できるプログラムとして今やすっかり認知され現在大手客船会社のほとんどが導入しているプログラムへとなってきているのだと氏は言う。
今後の新たな活動予定として姉妹会社でもある“ファイン・アート・エディション”が1999年より客船のインテリア・アートデザイン担当として美術品を船内に飾り、ギャラリーとして開設するということで話が進んでいるのだそうだ。
NCL社の(ノルウェジャンウインド、ドリーム)がその船体の長さをのばすといった革新的作業の後、インテリアデコレートの一環としてまずはスタートすることとなる。
アグレッシブに新たなチャレンジをし続ける彼らからまだまだ目が離せない。
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